中世後期から近世中期にかけて作られた手書きの絵本です。
装丁や挿絵装飾の美しさには中世欧州の装飾写本と並ぶものがあります。
物語本文に挿絵を添えるかたちで構成されている点で、今日の挿絵入り小説の原型といえましょう。
奈良絵本に仕立てられる作品には『伊勢物語』『大和物語』といった中古の王朝物語からはじまり、近世の短編物語におよびます。つまり物語文学全般です。中でも室町時代~江戸初期の短編物語が大部分を占めています。この時期の短編物語をふつう《お伽草子》と呼びます。だから奈良絵本の多くはお伽草子作品ということになります。
ここでは主に奈良絵本の解説をしていきます。