対 象 作 品

奈良絵本の題材となる作品は物語文学です。時代的には平安時代の王朝物語から江戸時代前期の仮名草子まで多彩です。
しかし、その中にあって際立っているのは室町時代から江戸時代前期に作られたお伽草子作品でしょう。奈良絵本といえばお伽草子作品中心とみなして間違いないでしょう。

平安物語
竹取物語/伊勢物語/住吉物語/源氏物語/落窪物語/大和物語など

中世軍記物語
保元物語/平治物語/平家物語/太平記/義経記/曽我物語など

説話集
説話集とは、小話を集めた本のこと。
撰集抄(せんじゅうしょう)

お伽草子
お伽草子の総数は300作品あまりはあると思います。
ちゃんと数えていませんが。
その中の半分くらいは奈良絵本に仕立てられているのではないでしょうか。
これもまだちゃんと数えていませんorz
ともかく、〈平安物語〉とか〈中世軍記物語〉みたいに例示できるものではありません。
しいて、数多く作られたものを挙げれば、
文正草子/鉢かづき/しぐれ/狭衣(さごろも)の草子
…あたりでしょうか。
お伽草子といえば、『酒呑童子』や『西行物語』なども人気がありました。
しかしこれらは絵本ではなく、もっぱら絵巻に仕立てられました。
『文正草子』や『しぐれ』は絵本としても絵巻としてもよく作られたもののようです。

幸若舞曲(こうわかぶきょく)
中世後期、能とともに劇としても文学としても楽しまれたジャンルです。
織田信長が桶狭間の合戦の前に
♪人間五十年、下天(げてん)のうちをくらぶれば、夢まぼろしのごとくなり〜
という舞を舞ったことは有名ですが、これは幸若舞曲『敦盛』という作品の一節です。
この『敦盛』もそうですが、源平の合戦を題材にしたものが多くあります。
文体的にはお伽草子と大して変わりません。
奈良絵本としては、お伽草子も幸若舞曲もおなじように読まれました。

仮名草子
近世初期〜前期に作られた短編物語を、今日、仮名草子と呼んでいます。
お伽草子と仮名草子は住み分けがされていたらしく、
仮名草子作品で奈良絵本に仕立てられているものは多くはありません。
 竹斎/女訓抄(じょくんしょう)/薄雪物語/大倭(やまと)二十四孝(の一部作品)など