石井研堂編『万物滑稽合戦記』

續帝國文庫(博文館)の一編として明治34年(1901)に刊行された本書は隠れた名著と確信しております。
現在、入手が困難で、古本屋で見出すことは稀です。
(もしお見かけの方がいらしたら、御一報くだされたし!)
序
目次
各編注記
 *後日、追加

序  ※明治44年6月刊行の第3版による

ねぐせの悪しき小児も、猿蟹合戦、かちかち山、のお伽話を聞く時は、すやすやと寝(しん)に就くを見れば、勝負を争ふてふことは、人の天性たるを知らる。されば、百年五十年に一度ある、ほんの戦争といふものを待ち遠く思ひ、牛を闘はせ、犬を闘はせて喜ぶ者あり、雞を闘はせ鶩を闘はせて喜ぶ者あり、小児は蜘蛛を闘はす支那人の蛩を闘はせ銭片魚(や)を闘はす何(いづ)れ勝負を争ふ天性より出てざるは無し。まいて、有情無情の別ちなく、白紙(しらかみ)の原に整々堂々の陣を布(し)き、禿筆(ちびふで)の毛さきに、一進一退の令を伝へ、哲理の六韜に滑稽の三略を経緯し、酒(しゆ)餅(へい)相戦ひ、器財相戦ひ、病薬菜果相戦ひ、昆虫魚鳥草木の属相戦ひて、朱字黒字に殺活擒(さつくわつきん)縦(しやう)の妙策を尽し、勾消抹乙に紛々擾々の偉観を極むるも未た曾て血を流し肉を飛ばすに致らず、たゞ、あゝ面白いと云ふ勝鬨の声をあげしめんことを期するのみ。文人の霊想亦賛化の功の大なること、露国が平和会議を首唱せる儔(たぐひ)に非じ。こゝに縮刷の功成り、不日発売するを聞き、喜(よろこび)の余り一言を序す。

  明治三十四年四月念三日

                                          石 井 研 堂

目次

1 精進魚類物語

2 鴉鷺合戦物語

3 鶏鼠物語

4 水鳥記

5 草木軍談賤爪木(くさきぐんだんしづがつまぎ)

6 虫合戦物語(御伽夜話)

7 獣太平記(けだものたいへいき)

8 黴瘡軍談(ばいそうぐんだん) 船越敬祐著

9 黴瘡雑話 船越敬祐著

10 竈将軍(かまどしょうぐん)勘略巻(かんりゃくかん) 時太郎可候(葛飾北斎)著

11 食類合戦和睦香之物 市場通笑著

12 忠臣瀬戸物蔵 十返舎一九著

13 茶漬原御膳合戦 萩原萩声著

14 金銀太平記 荒金土生著

15 大平気

16 三薬太平記 笑給著

17 虫看鑑(むしめがね)野辺若草(のべのわかくさ) 十返舎一九著

18  花見虱盛衰記 曲亭馬琴著

19 衣食住世帯評判記 曲亭馬琴著

20  菓物見立御世話 北尾政演著

21 桃太郎後日噺 朋誠堂喜三二著

22 猿蟹遠昔噺 恋川春町著

23 化物仲間別 伊庭可笑著

24 閣思(かちかちやま)獣境界(けだもののきょうがい) 十返舎一九著

25 貧窮合戦記

26 大平記餅酒合戦

27 世帯平記(せたいへいき)雑具咄(がらくたばなし)

28 世帯平記諫略巻

29 蚤蝨蚊狂言(のみしらみかきょうげん)

30 魚貝英記餅酒合戦

31 麻疹太平記(はしかたいへいき)

32 下界騒動乾坤三州志 東山図簶斎著

33 評判竜美野子 泉山坊梁鶴州著

34 五百崎虫の評判 市川白猿・談州楼焉馬著

35 珍術(ちんじゅつ)罌粟散国(けしさんごく)

36 麻疹戯言 式亭三馬著

37 滑稽雌黄 桂井蒼八著

38 含糖紀事 熊坂台州著

39 猿蟹物語 六樹園(石川雅望)著