内容部門



物語世界のことについて説明すべきところですが、
まだまだ全然できてません(>_<)


異郷(いきょう)
天竺・中国のような現実の異国、また仙郷・地界・天界など空想上のものも描かれる。そこの住人はそれぞれの土地の特性をもって描かれるものの、その一方では共通の描写も見られる。たとえば宮殿や人間の装束などである。床は基本的に石畳。これは中世の寺社縁起の約束事を継承したものらしい。

異類(いるい)
鳥獣虫魚の四生及び未確認生物のこと。テクストの内容に応じて多様に描かれることはいうまでもない。擬人物では人間の装束をまとって登場する。その一方では写実的に描写されることも多い。架空の生物としては龍・大蛇・大蟹・妖狐などが挙げられる。また、現実の生物であっても、伝写の過程で異形のものとなる場合がある。『熊野の本地』の「大亀」はその代表といえる。

飲食物(いんしょくぶつ)
主として餅・饅頭の類または酒が描かれている。

英雄(えいゆう)
日本武尊や源頼光四天王、俵藤太。異類退治譚のお伽草子・古浄瑠璃。

(おに)
妖怪の1種。人間の敵。酒呑童子・伊吹童子など。人が鬼となる場合もある(『磯崎』)。姿はさまざま。角のあるもの/ないもの、目一つ/二つ、指が三本/五本などいろいろ。

陰陽師(おんみょうじ)
陰陽道の担い手。『玉藻前物語』や『築島』などのように、陰陽寮の博士、安倍・賀茂両家がしばしば登場し、占文や助言によって物語の展開に大きな働きをすることが多い。

(かみ)
本地物。寺社縁起。

漁民(ぎょみん)
『蛤の草紙』『浦島太郎』

公家(くげ)
奈良絵本の主題となるものに公家物が多い。したがって公家は老若男女を問わず、様々に描きこまれている。

子ども(こども)
大人を縮小した姿で描かれる。初期の絵入版本とその点近似する。

地獄(じごく)
目連・義経

植物(しょくぶつ)
奈良絵本に描かれる植物は、第1に挿絵の場面中に描かれるもの、第2に表紙・題簽・見返・本文料紙などの装飾に描かれるものがある。第2の場合は各項目で述べているから、ここでは第1の場合のみ言及する。典型的なものは前栽の草花で、菊などが多い。それから松、庭石を描いている場合は表面に苔を示す緑色を使うことも多い。室内の調度としての生花。画中画にもさまざまな草木が描かれる。

修験者(しゅげんじゃ)
山伏。義経物。『築島』

巡礼(じゅんれい)
西行。回国僧。

神官(しんかん)
神社に仕える職。『藍染川』

仙郷(せんきょう)
仙人の住む世界。

僧侶(そうりょ)
奈良絵本には仏教的要素を大なり小なり含むものが多く、したがって主人公であれ脇役であれ、僧侶が描かれることははなはだ多い。

地界(ちかい)
地下世界。『諏訪の本地』。地上に戻ってきて人間の姿にもどる。

稚児(ちご)
僧になるべく寺院に住する子ども。お伽草子・仮名草子では、しばしば男色の対象として描かれる。奈良絵本には髪型に前髪を残すもの、稚児輪を結うものの2種が現れる。

中国(ちゅうごく)
中国の人物や事物の描写は類型的である。建物の床は升目で、その点、その他の異国・異界と共通する。

天竺(てんじく)
天竺、すなわちインドは中国と同様、類型的な異国描写となっている。建造物の様式は中国と大差がない。石畳。

動物(どうぶつ)
奈良絵本の大部を占めるお伽草子には、異類物といって、動物の世界を人間世界のように描いた物語が多く存在する。仮名草子にもその流れを汲むものは多い。だから奈良絵本に登場する動物は種々様々である。それらの動物は、多く、人間の装束を着、人間のような家屋や調度に囲まれている。しかし、その一方で写実的に動物を描いているものも少なくない。

尼僧(にそう)
墨染の衣に白い布。類型的。『一尼公』

農民(のうみん)
『藤袋の草子』

武家(ぶけ)
武家物。合戦の様子。また正装のものがある。

仏菩薩(ぶつぼさつ)
『鉢かづき』の観音のようにそのままの姿で描かれるもの。化身が描かれるもの。両方ある。

(ほとけ)→仏菩薩(ぶつぼさつ)

巫女(みこ)
『花鳥風月』、國學院大学蔵『文正草子』

山姥(やまうば)
苦難の主人公を助ける。『花世の姫』

山人(やまうど)
苦難の主人公を助ける。『築島』

妖怪変化(ようかい へんげ)
奈良絵本の中にはさまざまな妖怪変化が描かれている。鳥獣虫魚の四生に着想を得たものから、器物の妖怪まで。鬼の類は主として赤系の顔料で彩色される。少なくとも人間と同色ではない。